バーで大麻
その日は授業の後、叔父のバーに立ち寄った日だった。
理由は、普段の感謝を店の手伝いという形で表したかったからだ。
カクテルは作れないが、食器洗いでもしようかと思い叔父のバーへ向かったのだ。時間は夕方の6時手前。
表から入るやいなや、叔父は僕に「おぉ〜、どうしたん?」と優しくたずねた。
僕は少し照れくさかったので、閉店に一杯おごってもらいたいから、食器洗いを手伝いに来たと告る。
「おぉ〜、ありがとな。まだお客さん来ないからカウンターでゆっくりしとき」と僕に声をかけると、また作業に戻った。
まだ開店前だったので、叔父はカウンターでぼんやりとフルーツをカットしていた。
皮を剥く心地の良い音をうっとりと聴いているのか、バーの心地の良いジャズを聴いているのかわからなかったが、叔父は非常にリラックスしているように見えた。
「ほれ、食べな」とカットしたいくつかのフルーツと、トニックウォーターを僕にくれた。
マンゴーがむせるほどに甘く、舌の上で溶けていくようだった。
叔父は珍しい匂いのタバコを吸っていたが、きっと特別な拘りがあるのだろうと思い、その時は何も思わなかった。
スマホでパズドラをしながら時間を潰していると、ドアが開く音が聞こえ、フライング気味で初老のお客さんが入って来たのだ。
「大丈夫だよね?」とその初老の客は物腰柔らかく尋ねた。
「もちろんです」と叔父は言った。
叔父の接客が始まった。
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